ことばえらび 

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プラダを着た悪魔の感想①

言わずと知れた名作映画のはずだ。特に若い女性に支持者が多いらしい。

確かに部分部分ではいいところもある。

アンディにとってランウェイでの一年余は学びにはなったのかもしれないけれど、

自分の目には『毒上司からは早く逃げたほうがいいよね』という映画にしか映らなかった。

真面目で素朴なアンディは、スタンフォード法科大学院をジャーナリストになりたいからと蹴った才女だが、なかなか自分の思った通りの職を見つけられずにいて、手当たり次第出版社に履歴書を送り、ファッション雑誌の制作部署に面接にいく。明かに彼女は場違いなのだけど、ミランダが今までのオシャレ女子はオシャレでも仕事はできない人が多かったから、服装には無頓着だが真面目なアンディを雇う。

ミランダは女王みたいな人でカリスマ性があるけれど、独裁的で自分勝手。アシスタントはアシスタントというけどほとんど雑用係で、しかもお使いみたいな用件ばかりで子供たちの宿題までさせる始末。しかもアンディのことは名前で呼ばず、エミリーと呼ぶ。夜だろうがところ構わず電話をかけてくる。そんなミランダの弱点は家族問題で、夫ととの関係があまり良くないこと。

ミランダからのパワハラにアンディは不満轟々、しかしそれをナイジェルに相談しても君の代わりはいくらでもいる、甘ったれていると言われるだけ。この職場でアンディの心情を理解してくれる人はいない。

まず、ここまででもいろいろ癪に触る。ミランダみたいな独裁者を許す組織は健全とは言えない。2006年だから許されたのかもしれないが、今の時代ならパワハラだ。

カリスマは何をしても許されるのかもしれないが、付き合わされるのはごめんだ。

ミランダから命令されたからって、開店前の店を無理に開けてもらったりハリーポッターの出版前の原稿を取り寄せたり。こんな親に育てられて、ミランダの娘たちもろくな人間にならんぞ、と思う。

 

どうやったら上手く仕事をできるかアンディはナイジェルに相談し、形から入ってハイブランドの服を身につけるようになる。

元々頭もいいし気が利く女性ではあったのだろう、痒い所に手が届く仕事ぶりで彼女は次第にミランダの信頼を獲得していく。

これは砂の女と同じような描写だ。砂の村から脱出するためにまずは村人の信頼を獲得しようとしたのと同じように、

ジャーナリストになるためにコネを獲得する必要があると考えたアンディは、

ランウェイで評価される必要性を重視し、そのためには相応の見た目とファッションセンスも求められることを理解し、外見を変える。

しかしミランダがあまりにメチャクチャだから仕事がどんどん自分の人生に食い込んでくる。

父とのミュージカルや、ネイトの誕生日パーティ、何ヶ月も前から楽しみにしていたであろう予定を仕事のせいでキャンセルせざるを得なくなる。

アンディは人生において何が優先すべきものなのか、わからなくなっている。

仕事が順調になるとプライベートがうまくいかなくなるものだとナイジェルは言ったけれど、

それはミランダに振り回される為であって、仕事ができるようになった為ではない。

アンディの周りの人たちは、アンディにおかしいよ気づいてと忠告するがアンディはそんなことないという。

気づくと人間は組織に染められて取り込まれるものなのだろう。

カリスマって怖いものだ。宗教みたいなところがある。

自身の保身のために長年の仕事のパートナーの昇進話を無下にするのをみて、やっと、

このままじゃいかんと思ってミランダの元を去る。

(去る時だって、仕事すっぽかして突然携帯を水ぽちゃするのはどうかと思うが。)

 

まとめると、

気に食わない人たちをただ拒否するのではなくて、自分の置かれた場所でできることをやってみたらそこでは認められるようになったけど、自分の信念も曲げていて生きたい生き方ではないことに気がついてやっぱりやめた。

というように私にはどうしても思えてしまう。